悪気はないのは分かるけど、いささか困った人の話

  • 2013.10.19 Saturday
  • 19:30
もろもろの事情がひと段落つきましたので、書くことにします。

お付き合いをしていて、こちら側の意思がなかなかすんなりと伝わらない人がいました。
お相手は私がこれまでお会いしたことがないタイプと申しますか、とにかく想定外のリアクションをされることが多い、多い。
私もけっして機転が利くとか、要領や手際が良いタイプではないのですが、ついにある日、「悪気がないにしても、それはあまりにも不義理ではございませんか?」という仕打ちを受けてしまったのです。

このままでは相手に対して感情的になるか、あるいは私が精神的に参ってしまうかというところまで思いつめてしまい、ついにかかりつけの病院の先生に相談をしました。

「先生も、この場にいない人のことについて相談するのは言いづらいこととは思うのですが、すっかり困り果ててしまいまして」と切り出し、これまで相手とのコミュニケーションでストレスに感じたこと、世間話をしていたときにたまたま聞いた、相手の生い立ちのことで不思議に思ったことなどをひととおり聞いて頂きました。

先生からも「あくまでも疑いがある、ということですが」と前置きされたうえで、相手はアスペルガー症候群かもしれないこと、最近は関係書も多く出ているのでいくつか読んでみるように、本に書かれてあるすべてのパターンがあてはまるわけではないが、何か参考になるかもしれません、とアドバイスされました。

たしかに、すべての事柄が該当するわけではありませんでしたが、私がギョッとしたこと、あっけにとられたこと、ウッと言葉に詰まったこと、思わずムッとしてしまった出来事によーく似た行動が例に挙げられていて、調べるうちに重苦しかった頭の中が軽くなるのが分かりました。
それまでは、私に何か問題があるのではないか?私もこんなに器が小さいことではいけないのではないか?相手を思い通りにしようという昔のクセが出ているのか?と自責の念にかられていたのですが、(そのようなことも原因だったかもしれませんが)それだけではなくて、「相手に応じたコミュニケーションの取り方」を知らなかったのだと気づかされました。

(こちらのサイトの記事が読みやすかったです:東京都自閉症協会自閉症を知るアスペルガー症候群とは

病院の先生からは「相手と同じ土俵に立とう、または、相手を自分の土俵に引き入れようとすると、お互いに辛い思いをします。相手の良い面を認めて、それを生かすようにできたらいいですね」とも言われました。

で、「結局、どうすればいいんじゃろう?」と思って購入したのがこちらの本です。レビューにイラストが多く分かりやすいとあったので選んでみました。

発達障害がある人のための みるみる会話力がつくノート

当事者を対象に書かれていますが、「ああ、こういうところで相手はつまづくのか、あるいは、ばか正直に対応してしまうのか」というポイントが分かり、さらに頭の中がすっきりしました。

とくに仕事の場面ではそのつど用件の進み具合をクリアにするのが大切ですから、報告、連絡、相談事項の扱い方は、発達障害ではない人、社会人になって間もない人にも役立つのではと感じました。私も社会に出てから上司や先輩に注意されながら覚えていったことを思い出しました。

その後、当のご本人には、
  • 大事なことは文書かメールでお伝えする
  • 一つの文章は短めにする

(このあたりはビジネスマナーの基本でもあります)

  • ある程度は私がスケジュールを組まなければいけないという手間がかかりますが、一度に複数の案件を伝えないようにする
  • ここまで念を押したら失礼にあたるのではないか?と思えるようなことでも具体的に明記する
  • 自分が不快に思ったことは、信用できる人に相談をして冷静に具体的に伝える


そしてなにより、

「相手が察してくれるだろう」という期待は、しない。

…といった心構えで対処しました。

その結果、以前よりずっとスムーズに仕事が進められるようになりましたし、相手に対しても余裕をもってお付き合いできるようになりました。もともと細かい作業や根気のいる作業は得意な人でしたので、「良い面を引き立てるように」という先生からのアドバイスが実行できるように努めました。

なによりも、私のストレスが激減したのが救いでした。 対策が立てられるようになるまでには、頭が重くて気分もどんよりして、何かが北国の雪雲のようにずっとたれこめているような、上から押さえつけられているような心地がしていました。また「うつ」が再発してしまったのではないか?と思ったほどです。

それがいっぺんに軽くなったのです。まさかその人との対人関係が、そこまで私の負担になっていたとは思いもしませんでした。夫からは「ストレスの最中にいる時ってのは、案外原因が分からんもんよね。後になって気づくことが多いよ」とも言われました。

私は他人を安易に「こういう人だ」と決めつけたり、レッテルを貼るのは嫌いです。ですから、じつは以前から「もしかして?」と思う事はあったのですが、素人判断は良くないと思い、我慢していたのです。

まあとにかく、ほんとうに疲れました。もっと早くに先生に相談していれば、あんなに長い間、相手とやり取りをしていて時空がねじれるような感覚を何度も味わったり、イライラすることも無かったのに…と感じています。とにかく、人間関係を台無しにする前に事なきを得られたので、ほっとしました。

おかずの盛りつけ

  • 2013.10.09 Wednesday
  • 21:18
かれこれ5年ぐらい前のお話です。

12ステップグループでの活動が縁で知り合った県外のメンバーさんから、読書会を兼ねた親睦会へのお誘いを受けました。

会場が広島からかなーり東へ離れた場所だったことと、もとより私は大人数での勉強会の類が苦手なので「どうしようかなあ」とちゅうちょしたのですが、せいぜい10人足らずの小規模の宿泊イベントと聞いて参加を決めました。その会には12ステップグループに限らず、広い意味で自助グループに関わっている人や、依存症者の家族の方の話も聞けて、なかなかに新鮮でした。

参加者の中には、私よりだいぶ年下でしたが、同じ摂食障害の女の子がいました。

実は彼女とはそのときよりもさらに1年ほど前に、親睦会に誘ってくれたメンバーに紹介されていたので面識はありました。久しぶりに会った彼女は、初めて会ったときとはまるで別人のように顔色が良くなっていて、表情もいきいきとしていたのでとても驚きました。

再会した私たちは積もる話をいろいろとしました。彼女は私が参加している12ステップグループとは別のやり方で回復のきっかけをつかんだのですが、そのエピソードも(ここはネット上なので書きませんが)、当初の予定どおりではなく、やむを得ずそうなった事で引き起こされたことで、でもそれはただの偶然ではなくて神様か何かの配慮のせいでそうなったのでは?と思えるようなものでした。

さて、翌朝のこと。

私たちが利用した宿泊施設は備え付けの台所で各自で食事を作るようになっていたので、朝食は起きた順番から適当に作ることになっていました。私にしては早起きしたほうだと思っていたら、すでに彼女が朝食の支度をしていました。他の参加者はまだ眠っていました。

私はあえて口出しをせず、彼女に段取りを任せていたのですが…

テーブルに運ばれたおかずの盛りつけ方が、下町の定食屋さんもびっくりというか、最近はやりのラーメン屋さんの「全部のせ」も軽く超える豪快さでした。…私としてはとっても見慣れた、懐かしい盛り方ではありました。つまり、過食嘔吐をしていたときに「どうせすぐに吐くんだから、ええわい」と食器に流し込んでいたときのやり方だったのです。

うーむ、食べ吐きが止まっても盛りつけまでにはまだ気がまわらないか、と思いましたが、私は「雪崩をおこしそうな大盛りのおかず」が乗ったお皿をあえてそのままにしておきました。

やがて、参加者の皆さんが次々と起きてきました。
皆さん、てんこ盛りのおかずを見て一瞬「あらまあ」という表情を浮かべていましたが、彼女が率先して朝食を作ったと聞いて、一様に納得していました。

ところが、ある年配の女性がめざとくその「物体」を見つけ、「どうしたの!こういうのはね、もうちょっとキレイに盛りつけないと」と言うが早いか、お皿とお箸をもちだしていそいそとおかずを取り分け始めたのです。

その女性は、依存症当事者の奥様でした。

長い間ひきこもって食べ吐きをしていた女の子が、他の人と一緒に食事ができるようになるだけでもとてもすごいことです。そこまで回復するまでどれだけ時間と気力がかかるかは私自身も通ってきた道なので、彼女がどのように食事の段取りをしようとあえて黙っていたのに。

私はとっさに料理を作った彼女のほうを振り返りましたが、当の本人はとくに気にしなかったのか、表情が変わったふうでも、その女性に意見を言うわけでもなかったので、私もスルーすることにしました。が、その家族の方に対して、

…なんか、うざい…

と、つい心の中でつぶやいてしまいました。お世話をする癖が無意識に出てしまうんでしょうか。まあ、それはそれとして、朝食は美味しく頂きました。

彼女に会ったのは今のところそれが最後で、いつのまにか連絡もとだえてしまいました。彼女は私よりも深刻で複雑な境遇を抱えていて、専門家のサポートが不可欠だろうとも感じていましたので、生き方の問題にとりくむうちに私や他の12ステップグループのメンバーとは別の方法を選んだのでしょう。どんな道であれ、彼女が本来の生命力を取り戻し、落ち着いた生活を送ることができるのならそれがいちばん良いことです。もしまた縁があれば会えることもあろうかと思っています。

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