袖ふりあうも他生の縁、とは言いますが。
- 2012.09.13 Thursday
- 23:18
朝晩はだいぶ涼しくなってきましたが、まだまだ昼間は厳しい残暑が続いています。
真っ昼間に出かける用事が出来てしまい、うんざりしながら下を向いて歩いていると、なにかが視界の端をよぎりました。
トンボです。
川沿いといえども街中で見かけるのは珍しいので、さっそく写真を撮ろうと思いました。
気づかれないように、そーっとカバンの中からケータイを取り出します。…次の瞬間、サッと飛び立ちました。「ああ、やっぱり逃げられたか!」と思いましたが、またすぐ近くに止まりました。
…どうもこのトンボ、様子がおかしいのです。
橋の上は他の場所よりも風がよく吹くのですが、少し強い風が吹いたときに、風に乗って飛んでいく様子もなく、かといって踏ん張ることもできず、逆立ちになってしまったのです。その逆立ちのまま、もとの体勢に戻ることができません。
…トンボの三点倒立を眺めながら、なんだか呑気に写真を撮るような心境ではなくなってきました。
トンボの立場としては、巨大な人間に凝視されて命の危険を感じているところでしょう。どうにか体を元通りにして飛び立ちましたが勢いがなく、曲線を描くように地面に落ちてしまいます。何度も試しますが、フラフラしたり、また三点倒立をやってしまったり。そのうち歩道の真ん中でぐったりしてしまいました。
用事があるんだ、こんなことをしている時間は無いし、と思いなおしてその場を通り過ぎようとしましたが、4、5歩進んだところでやっぱり引き返してしまいました。
橋の上の歩道ですから道幅も狭いですし、すぐそばは車道。国道なので車の通りもひっきりなしですし、この調子でフラフラ車道側に飛んでしまったらまずアウトです。けっして私は動物好きではないし、どちらかというと昆虫は苦手なのですが、トンボの末路を考えるとこのまま見過ごすのはどうにもかわいそうな気がしてきました。
トンボの背後にまわりこんでおもむろにしゃがみこみ、そーっと両手でトンボを囲みました。トンボも飛び立つ気配も這い上がる気配もありません。囲んだはいいものの、そこからどうしたら良いのか私も分かりません。
カンカン照りの中、騒々しい車道のそばの歩道でしゃがみこみ、トンボを捕まえようとするオバちゃん。…はたから見たら奇妙だよねえと思いましたが、暑かったせいか、通行人が一人もいなかったのが幸いでした。
トンボにどこまで伝わるか分かりませんが、声をかけながら手の親指と人差し指の付け根の部分で、トンボのハネをぱっと挟みました。一瞬手のひらの中でトンボがバタバタともがきましたが、すぐにおとなしくなりました。
トンボに触るなんて、小学校のときに近所の田んぼで遊んで以来です。ハネはトンボの体のわりには大きく、ちいさな網目のような模様があります。でも、とっても薄くてすぐに壊れそうで、こんなのでよく飛べるよなあと感心しました。よく見ると、右側の下の部分のハネが欠けていました。名誉の負傷でしょうか。うまく飛べないのはこのせいなのか、それとも寿命なのか。
結局、橋を渡りきったところ、植え込みの陰にトンボを置きました。日の光も直接当たらないし、土の上だし、ちょうど川岸に向けて傾斜が始まるところなので、まず大人が足を踏み入れる所ではありません。
置いてもしばらくビクともしないので「げ、死んだか?余計なことしたかしら」と焦りましたが、お腹の部分がゆっくり動いていたので一安心。
鳥か、道草をしている子どもに見つかったらどうしようもありませんが、熱いアスファルトの上で人間に踏まれたり車にひかれるよりマシでしょう。
おだやかに天寿をまっとう(虫でも言うのかしら)できるように少しの間見守って、立ち去りました。
まだまだ日は高く、川沿いの歩道をまたまた下を向いて歩いていたら、今度はセミの亡骸が落ちていました。そーっと靴でつつくと、カサッと乾いた音がしました。
暑いけど、季節は少しずつ移り変わっているんだなあと感じたお昼でした。
真っ昼間に出かける用事が出来てしまい、うんざりしながら下を向いて歩いていると、なにかが視界の端をよぎりました。
トンボです。
川沿いといえども街中で見かけるのは珍しいので、さっそく写真を撮ろうと思いました。
気づかれないように、そーっとカバンの中からケータイを取り出します。…次の瞬間、サッと飛び立ちました。「ああ、やっぱり逃げられたか!」と思いましたが、またすぐ近くに止まりました。
…どうもこのトンボ、様子がおかしいのです。
橋の上は他の場所よりも風がよく吹くのですが、少し強い風が吹いたときに、風に乗って飛んでいく様子もなく、かといって踏ん張ることもできず、逆立ちになってしまったのです。その逆立ちのまま、もとの体勢に戻ることができません。
…トンボの三点倒立を眺めながら、なんだか呑気に写真を撮るような心境ではなくなってきました。
トンボの立場としては、巨大な人間に凝視されて命の危険を感じているところでしょう。どうにか体を元通りにして飛び立ちましたが勢いがなく、曲線を描くように地面に落ちてしまいます。何度も試しますが、フラフラしたり、また三点倒立をやってしまったり。そのうち歩道の真ん中でぐったりしてしまいました。
用事があるんだ、こんなことをしている時間は無いし、と思いなおしてその場を通り過ぎようとしましたが、4、5歩進んだところでやっぱり引き返してしまいました。
橋の上の歩道ですから道幅も狭いですし、すぐそばは車道。国道なので車の通りもひっきりなしですし、この調子でフラフラ車道側に飛んでしまったらまずアウトです。けっして私は動物好きではないし、どちらかというと昆虫は苦手なのですが、トンボの末路を考えるとこのまま見過ごすのはどうにもかわいそうな気がしてきました。
トンボの背後にまわりこんでおもむろにしゃがみこみ、そーっと両手でトンボを囲みました。トンボも飛び立つ気配も這い上がる気配もありません。囲んだはいいものの、そこからどうしたら良いのか私も分かりません。
カンカン照りの中、騒々しい車道のそばの歩道でしゃがみこみ、トンボを捕まえようとするオバちゃん。…はたから見たら奇妙だよねえと思いましたが、暑かったせいか、通行人が一人もいなかったのが幸いでした。
トンボにどこまで伝わるか分かりませんが、声をかけながら手の親指と人差し指の付け根の部分で、トンボのハネをぱっと挟みました。一瞬手のひらの中でトンボがバタバタともがきましたが、すぐにおとなしくなりました。
トンボに触るなんて、小学校のときに近所の田んぼで遊んで以来です。ハネはトンボの体のわりには大きく、ちいさな網目のような模様があります。でも、とっても薄くてすぐに壊れそうで、こんなのでよく飛べるよなあと感心しました。よく見ると、右側の下の部分のハネが欠けていました。名誉の負傷でしょうか。うまく飛べないのはこのせいなのか、それとも寿命なのか。
結局、橋を渡りきったところ、植え込みの陰にトンボを置きました。日の光も直接当たらないし、土の上だし、ちょうど川岸に向けて傾斜が始まるところなので、まず大人が足を踏み入れる所ではありません。
置いてもしばらくビクともしないので「げ、死んだか?余計なことしたかしら」と焦りましたが、お腹の部分がゆっくり動いていたので一安心。
鳥か、道草をしている子どもに見つかったらどうしようもありませんが、熱いアスファルトの上で人間に踏まれたり車にひかれるよりマシでしょう。
おだやかに天寿をまっとう(虫でも言うのかしら)できるように少しの間見守って、立ち去りました。
まだまだ日は高く、川沿いの歩道をまたまた下を向いて歩いていたら、今度はセミの亡骸が落ちていました。そーっと靴でつつくと、カサッと乾いた音がしました。
暑いけど、季節は少しずつ移り変わっているんだなあと感じたお昼でした。
- さんぽ
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