『女生徒』

  • 2004.01.27 Tuesday
  • 22:10
高校時代に友人から薦めてもらって、いまでも大好きな短編がある。
太宰治の「女生徒」だ。

この作品は、読むたびに再発見がある。「若いうちに本を読んでおいて良かった」と思う一冊だ。今回心にとまったのは、次のくだりである。

「...本能、という言葉につき当たると、泣いてみたくなる。本能の大きさ、私たちの意志では動かせない力、そんなことが、自分の時々のいろんなことから判って来ると、気が狂いそうな気持になる。どうしたらよいのだろうか、とぼんやりなってしまう。否定も肯定もない、ただ、大きな大きなものが、がばと頭からかぶさって来たようなものだ。そして私を自由に引きずりまわしているのだ。引きずられながら満足している気持と、それを悲しい気持で眺めている別の感情と。なぜ私たちは、自分だけで満足し、自分だけを一生愛して行けないのだろう。本能が、私のいままでの感情、理性を喰ってゆくのを見るのは、情ない。ちょっとでも自分を忘れることがあった後は、ただ、がっかりしてしまう。あの自分、この自分にも本能が、はっきりあることを知って来るのは、泣けそうだ。お母さん、お父さんと呼びたくる。けれども、真実というものは、案外、自分が厭だと思っているところに在るのかも知れないのだから、いよいよ情ない。...」

ある少女の、朝起きてから眠るまでの一日が、彼女の語りで綴られているのだが、ひとたび想像しはじめると止まらなくなるところとか、この世の物事は「きれいなもの」と「きたないもの」のどちらかしか存在しない、と思っているところとか、潔癖さとか嫌悪とか、今こうしてオバサンの門口に立った現在の私が読みかえしても、「うん、わかるわかる!」とうなずいてしまう。

はじめて読んだ時の感想は、「昔の女の子も、同じようなことを考えていたんだ!」だった。でも、作者は男性なんですよね…。なんでこんなに女の子の気持ちがわかったんだろう?

なんだかんだで2年

  • 2004.01.25 Sunday
  • 10:38
「食べ吐き生活」にとりあえず区切りをつけて、まる2年を迎えることができました。みなさまと神様と自分の身体に感謝でございます。

グループに集まるアルコホーリックのオジサンたちは、実は優しい人が多い。家族に迷惑をかけた分、私に埋め合わせをしてくださっているのか、それとも「摂食障害者ならではの屁理屈」をたれる私のヘソを曲げさせたら、ものすごく面倒なことになるから我慢してくださっているのか、真意のほどはわかりませんが、おかげさまでスクスク、ヌクヌクと過ごさせていただいております。

AAのビッグブックの中に「いつかは飲酒を楽しめるようになるという妄想」という表現があります。
でも、多くのメンバーの皆さんは「あの頃は、じつは美味しい酒なんて飲んでいなかった」と言われます。私だって、あの頃は食べ物を美味しいと感じて口にしたことなんて、無かったのです。

このごろは食べ物がほんとうにおいしい。なんと幸せなことでしょう。

お酒を止めはじめて間もない方が、食事のときに「刺身にゴハンって、こんなに美味しかったんですねえ」としみじみ言ったことがありました。そう、ゴハンは美味しい。食事自体が試練なんかじゃない、と実感します。
「一生の進行性の病気であること、祈りと黙想とともに日々の執行猶予を受けていること」を忘れなければ。

色紙の思い出

  • 2004.01.17 Saturday
  • 07:27
先日の「ミニラウンドアップ」のバースデーミーティングで、2年目のお祝いの色紙を頂きました。

さて、この色紙については、私にはオモシロイ思い出があります。

2年前、私がAAAに参加し始めて間もない頃のことです。まだまだ嘔吐が止まらなくて危なっかしかった私に、彼氏が「ミニラウンドのときに、あなたにも色紙を贈るように言っておくよ。励みになるよ」と配慮してくれました。

その時はお正月のイベントだったので、県外からもメンバーがやって来ていました。より多くの仲間に書いてもらおうと、地元の仲間が、向かいに座っていたメンバーに色紙を手渡したときのことです。受け取ったその男性は、ひとこと言い放ちました。

「なんだ、広島では、たった1ヶ月で色紙を書くのかい。」

きれいな東京弁でした。

その晩に、私が事の顛末を話したところ、仲間が力を込めて言ってくれました。「そいつは何を言いよるんや。1ヶ月だからこそ大事なんじゃ。本人が一番苦しいときや。そんなときに仲間の言葉がどんなに励ましになるか分からんのか。
たぶん、その人も最初は苦しかったはずなんよ。だけどそれを忘れとるんじゃろうのう。」

「ま、わからんで。東京こそ田舎者の集まりじゃけえの。」

「ほうよ。ほんまの東京の人って言うたら、下町の江戸っ子よ。寅さんの世界よ。人情にあついんじゃけえ。」

今の私だったら、その東京弁のオッチャンに言われても鼻で笑えますが、当時はものすごーく落ち込んでしまいました。だから、みんなが自分のことのように励ましてくれたのが、とてもうれしかったのです。

その後、私も「あのオッサンよりは一日も長くAAに居座ってやる!」と心に誓ったし、つながって日の浅いメンバーを見ると、あのときの悔しさを思い出して、相手には心遣いをしなきゃいけないな、と思うようになったので、今となっては、あれもいい思い出です。

遅ればせながら、明けましておめでとうございます

  • 2004.01.05 Monday
  • 18:23
みなさま、明けましておめでとうございます。

このお正月は、AAのイベント(ミニラウンドアップ)に参加しました。ゴロゴロしたり、気が向いたら厨房のお手伝いをしたり、ミーティングに参加したり、マージャンを見物しているうちにアッという間に過ぎてしまいました。

このたびは仲間から素敵な贈り物をいただきました。片手に乗るくらいの、素朴な木のコースターです。

年輪を数えていたら、気づかされることがありました。すくすくと育った一年もあれば、目をこらさなければ前の年と見分けが付かないくらいのものもあります。きっと、この木にとっては試練の年だったのでしょう。

時には急速に、時にはゆっくりと。私たち人間も、すぐに回復できるものではないでしょう。
だけど、今日一日を生きていれば、あるとき大きく変わることだってある。そう信じています。

感謝感謝。

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