野球が分からなくても笑える小説

  • 2013.06.18 Tuesday
  • 22:50

走れ!タカハシ 村上龍

この本を図書館で借りて読んだのは、高校2年生の1学期でした。
タイトルにある「タカハシ」とは高橋慶彦さん、70年代後半〜80年代にかけて活躍した広島カープの選手で、今でも年季の入ったファンからは根強い人気があります。

以前、生粋の広島県人である夫に「いま売り出し中のカープの若い選手がおるけど、慶彦さんとどっちが人気あった?」と尋ねたら「そらもうヨシヒコよ!」と即答されました。「あの選手のファンは、若い女の子がほとんどやろ?慶彦は女子高生だけじゃのうて、クラブのママさんにまで人気があったんで!飲み屋でエエ顔しよう思うてカープの話をしたら慶彦の話で盛り上がってしもうて、こっちは空振りじゃったけえの」。いや、そこまでは聞いてないんですが。

タイトルから連想される筋書きとは違って、すべて架空のお話で、主人公もその慶彦さんではなくてごく普通の人たちです。登場人物とは直接かかわりのないところで慶彦さんが走ったり打ったりしていて、それが物語の要所になっているという筋書きです。

高校生の時もクスクス笑いながら読みましたが、今回も同じところで吹きだしてしまいました。村上龍さんの小説なので下ネタもけっこう出てきますが、野球が分からなくても楽しめます。笑えます。

雑誌に発表されたのが1983年〜85年。ざっと30年前の作品です。バブルよりももっと前、フリーター、リストラなんて言葉はまだ無かった頃で、一度就職すれば正社員として定年まで勤められる、これからも経済は成長していくものと信じていられる時代でした。

…ではありますが、登場する男性陣はどこか要領が悪くて、人生に疲れています。昔から人の悩みはたいして変わらないのか、それともさっそうとグラウンドを駆けめぐる慶彦さんを引き立てるための作者の意図なのかは分かりませんが、今回読み返してみて「うだつの上がらない男性陣」と「開き直って元気な女性陣」の対比が面白いなあと思いました。

この本を読んだ当時、私はプロ野球にまったく興味がありませんでした。

ある日、慶彦さんが実在の人物なのかどうか知りたくて、クラスメートの女の子に声をかけてみました。その前の年に日本シリーズが行われていたとき、彼女は授業中にも関わらず毎日ポケットラジオを持参しては、こっそり野球中継を聴いていたからです。ライオンズの秋山さんがバク宙してホームインした、あの日本シリーズの年です。混戦の末に敗れたときには、彼女はカープの野球帽をかぶったまま、教室のカーテンの陰にかくれて泣いていたのでした。

「タカハシヨシヒコさんって、カープの選手なの?」と聞いた私に、彼女は「おるよ!かっこいいよ!今度、巨人戦がテレビであるから、見てみて!」と目をキラキラ輝かせて教えてくれました。

…その後の話は長くなるので省略しますが、私は現在こうして広島に住んでいるわけですから、人生の転機になった一冊ということになります。

でも今に至るまで、慶彦さんのサインを手に入れられないままなんですよね。夫に話をしたら「慶彦が若手の頃は、僕の弟が勤めとった店に、よう来よったらしいでー」とのこと。残念です。
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